生活習慣病とは

生活習慣病イメージ

生活習慣病とは、遺伝的な体質に加えて、積み重なってしまうと健康に害を及ぼしてしまうような生活習慣を、続けることによって発症する疾患を指します。主なものとしては、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)などがあります。

たとえば食べ過ぎることが多かったり、食べ物の好き嫌いが激しかったり、さらに夜遅くに食事をすることが多いといった食習慣は、生活習慣病の大きな原因となります。また運動する習慣があまりない場合、脂肪がたまって肥満になったり、筋肉量が落ちて活動的でなくなったりすることで、やはり生活習慣病を引き起こしてしまいます。このほかにも、お酒の飲み過ぎや喫煙、ストレスは大きな危険因子となります。

生活習慣病は、はじめの頃はあまり自覚症状がないのですが、そのまま何の治療もしないでいると、動脈硬化を進行させてしまいます。動脈硬化とは様々な原因で血管が固く厚くなってしなやかさを失うことで、傷つきやすくなって血管が狭くなったり詰まったりする危険が高まるものです。

動脈硬化自体は老化現象でもあるのですが、とくに高齢の方では膵臓や腎臓など内臓機能の低下、筋肉量の低下による活動量の減少や内臓脂肪の増加などによって、生活習慣病のリスクが高まることが知られています。生活習慣病によって動脈硬化が促進されると、脳梗塞や心不全の原因となます。これらは生命予後に関わる場合があるだけではなく、血管性認知症を直接引き起こしたり、その他の認知症を悪化させる要因となり生活の質を大きく落として要介護状態になったりするリスクがあります。

生活習慣病の予防や改善のためには、定期的に健康診断を受け、ご自身の身体の状態をチェックすることが大切です。もし検査結果で異常を指摘されたり、気になる症状があったりする場合は、お早めに当クリニックにご相談ください。

高血圧症

血圧とは、血液が血管の内壁を押す力のことですが、この血圧が

  • 診察室で測定した場合
    「収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上」
  • 家庭で測定した場合
    「収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上」

の状態が続いている場合に高血圧症と診断されます。家庭血圧の基準は診察室よりも5mmHg低く設定されています。一度の測定で高血圧症と診断するのではなく、繰り返し測定しても高い数値が続く場合に高血圧症と診断されます。

高血圧症は、遺伝的要因に加えて食生活、喫煙やアルコール、加齢、肥満、運動不足、精神的ストレスなどの環境要因が重なることで発症すると考えられています。日本ではとくに食生活における塩分の摂り過ぎがリスク要因となっています。また喫煙も、タール・ニコチン・一酸化炭素が体内に入り、全身の血管が収縮することで高血圧症の原因となります。

このほか、睡眠時無呼吸症候群や、甲状腺や副腎の疾患などによるホルモン異常も高血圧を引き起こすことがあります。高血圧と診断された際、あるいは降圧薬を飲んでも血圧がなかなか下がらない場合は、こうした病気に関する検査も行うことがあります。

高血圧症そのものには明確な症状がないことが多いのですが(重症になると頭痛やめまいなどを覚える場合があります)、長期間治療せずに高血圧が続くと、血管の弾力性が低下することによって内壁が傷つき、動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの重い合併症を引き起こすリスクを高め、また、腎臓にも負担がかかり、腎機能の低下を引き起こす可能性があります。さらに、動脈硬化は、認知症の原因や認知症の悪化要因にもなります。このため、早期に治療開始することが重要です。

高血圧の治療では生活習慣の改善が重要で、減塩、肥満の解消、禁煙、節酒、運動などに取り組むことが求められます。
具体的には、

  • 塩分摂取を1日6g未満にする
  • 肥満(BMI25以上の状態)の解消を目指す
  • 禁煙する
  • 過度な飲酒をさける。目安としてはビール500ml、日本酒1合、ワイン2杯までなど(女性はその半分)
  • 1日30分程度の軽い運動を、週3回以上行うようにする

などを実践するようにします。
生活習慣の改善だけで血圧がコントロールできず、たとえば収縮期血圧が160mmHg以上または拡張期血圧が100mmHg以上の「II度高血圧」と呼ばれる状態の場合、また合併症のリスクが高い場合は、早期に薬物療法を開始することが推奨され、並行して生活習慣の改善を行っていくようにします。

糖尿病

糖尿病とは、血液中のブドウ糖が細胞にうまく取り込まれず、慢性的に血糖値が高い状態にある疾患のことです。生活習慣病である糖尿病(2型)の原因は主に、ブドウ糖を血液中から細胞に取り込む際に重要な役割を果たす「インスリン」というホルモンの分泌不足、そしてインスリンが分泌していても、その機能が弱まっているインスリン抵抗性のふたつです。

インスリンは膵臓から分泌されますが、分泌不足となる原因は、加齢による老化や長年にわたる好ましくない食生活などによって、膵臓の機能が低下していることが挙げられます。またインスリン抵抗性に関しては、肥満、とくに内臓脂肪型肥満が関係していると考えられており、内臓脂肪から放出される物質がインスリンの効果を弱めるとされています。

糖尿病の初期はほとんど無症状ですが、高血糖が長期間続くと、全身の血管が障害されてさまざまな問題があらわれます。心臓や脳の血管で動脈硬化が進行して心疾患や脳疾患の危険が増すほか、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」という糖尿病三大合併症と呼ばれる疾患を引き起こします。これらの合併症により、失明や人工透析、四肢切断などに至る危険があるものです。また、糖尿病による血管障害が、認知症を惹起したり、認知症を悪化させる要因ともなり得ます。

糖尿病の治療に関しては、まず生活習慣の改善が重要で、食事の管理や運動習慣の維持による血糖コントロールを行っていきます。食事においては、糖質の過剰摂取に注意し、血糖値を上げやすい夜遅くの食事は控えるようにします。また適度な運動も糖尿病の改善には有効です。有酸素運動によって肥満を解消し、さらに筋肉トレーニングによって筋肉をつけていきます。筋肉にはインスリンを効きやすくする効果があります。

生活習慣の改善だけでは血糖値がコントロールできない場合、また糖尿病が進行して合併症のリスクが高い場合は、薬による治療を行います。使用する薬としては、インスリンの分泌を促進したり働きを高めたりするもの、糖の吸収を遅らせるもの、血液中の糖を尿として排泄させるものなどがあります。これらの薬でも効果が上がらない場合は、インスリン自己注射を行うことになります。

高齢の方で薬物療法を行う際は、腎臓や肝臓の機能が低下している場合が多いため、薬が効きすぎて低血糖にならないよう、注意する必要があります。また運動などを行う際には、医師の指示に従って行うようにします。ほかにも基礎疾患がある場合は、それらとの影響を考えて治療を行っていくことが重要になります。

脂質異常症

脂質異常症は、血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪などの脂質が正常とされる基準を外れ、血中の脂質バランスが崩れる疾患です。脂質異常症と診断される基準値は以下のようなものです。

高LDLコレステロール血症
LDL(悪玉)コレステロール値≥140mg/dL
高トリグリセライド血症
中性脂肪≥150mg/dL
低HDLコレステロール血症
HDL(善玉)コレステロール値<40mg/dL

LDL(悪玉)コレステロールは、体の隅々までコレステロールを運ぶ働きをします。またHDL(善玉)コレステロールは、体に余ったコレステロールを回収する働きをするものです。LDLコレステロールが多すぎたり、HDLコレステロールが少なすぎたりすると、血中に脂質が過剰となってしまいます。重要なエネルギー源である中性脂肪(トリグリセライド)は、摂り過ぎると皮下や内臓周辺、肝臓や血中に蓄えられ、肥満を招きます。

脂質異常症自体に自覚症状はほとんどありません。しかしそのままにしていると、血管の内壁にコレステロールが付着して粥状の物質(プラーク)ができ、粥状動脈硬化という動脈硬化が進行し血管が狭くなります。またプラークが破裂して血栓が血管を詰まらせると、心筋梗塞や脳卒中などに直結してしまいます。脂質異常症を長期間放置しておくと認知症の原因となることもあります。早期に治療を開始することが大切です。

脂質異常症は、遺伝的要因に加えて、高カロリーな食生活や喫煙、過剰な飲酒などの生活習慣、運動不足などの環境的要因が重なることによって引き起こされると考えられています。ほかに甲状腺ホルモンの異常や腎臓病などが原因になることもあります。

脂質異常症の治療では、生活習慣、とくに食習慣の改善が重要です。動物性脂肪や乳脂肪の摂り過ぎに注意し、大豆などの植物性たんぱくや、脂質の吸収を抑える食物繊維を積極的に摂るようにします。食物繊維の例としては、イモ、根菜、キノコ、野菜、豆類、海藻などがあげられます。またEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸にはコレステロールを減らす働きがあるため、これらを多く含んだサバ、イワシ、サンマなどの青魚を摂ることも推奨されています。

このほか、喫煙は善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールの酸化を促進して動脈硬化を引き起こしやすくするため、禁煙することは重要です。またストレスホルモンであるコルチゾールは、コレステロールを増やすと考えられていますので、睡眠をしっかりとり、なるべくストレスをためないようにしましょう。一方、適度な運動は善玉コレステロールを増やし、中性脂肪の増加抑制に役立つため、運動習慣をつけることも大切です。

生活習慣の改善だけでは脂質異常が改善できず、狭心症や脳梗塞など合併症発症のリスクが高い場合は、薬による治療を行います。使用する薬としては、主にコレステロールを合成する酵素を阻害するスタチン系薬と呼ばれるものや、中性脂肪を低下させる薬、ほかにEPA・DHA製剤や漢方薬などがあります。

高尿酸血症(痛風)

高尿酸血症とは、血液中の尿酸と呼ばれる物質が過剰になっている状態を指します。高尿酸血症自体に自覚症状はほとんどありませんが、高尿酸血症は持続すると、尿酸が針状の結晶となって関節内に沈着。これを白血球が異物として攻撃することにより、関節の腫れや激痛を伴う炎症が引き起こされます。これがいわゆる「痛風」です。

痛風の発作は、足の親指の付け根が赤く腫れ、痛みを伴うことが典型的です。症状は数日で治まりますが、高尿酸血症が改善されないままであると再発を繰り返します。ほかにも沈着する場所によって、腎機能低下や尿路結石、痛風結節(皮下の様々なところにコブができる)などの合併症が引き起こされる場合があります。

高尿酸血症を引き起こすタイプとしては、尿酸の「産出過剰型」や「排泄低下型」、その両方が合わさった「混合型」があります。尿酸はプリン体を分解したときに出る、いわば老廃物です。プリン体は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質であり、細胞の核酸の構成成分でもあります。このプリン体を多く含む食品を摂り過ぎたり、無酸素運動などの激しい運動をしたりすると尿酸の産出過剰となります。また加齢などによる腎機能の低下があると尿酸の排泄が低下してしまいます。

高尿酸血症の改善としては、まずプリン体を多く含む食品の摂り過ぎに注意することです。プリン体を多く含む食品としてはレバー類、白子、エビ、イワシ、カツオ、煮干し、干し椎茸、ビールなどがあります。またアルコールは様々な作用で尿酸値を上げることが知られているため、節酒するようにします。

尿酸値がなかなかコントロールできず、痛風などのリスクの高い場合や、過去に痛風発作を起こしたことがある場合には、薬物療法を行います。使用する尿酸降下薬としては、尿酸の生成を抑える薬、尿をアルカリ化する薬、尿酸の排泄を促す薬などがあり、症状に併せて処方していきます。また痛風の発作が出ている場合、関節炎を抑える薬として、主に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を使用していきます。

なお、痛風発作が起きている時に薬で尿酸値を急に下げてしまうと、さらに痛風発作を悪化させてしまうため、症状が落ち着いてから尿酸降下薬は開始するようにします。痛風発作が起きる前、予兆がある時点では、コルヒチンという予防、悪化防止の内服薬もあります。これは炎症を引き起こす白血球の反応を抑制することで、痛風発作の痛みを軽減するものです。